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居酒屋の「お通し」はいらない? 「お通し不要」と断られた時の対応・対策とは

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立教大生がアンケート調査。お通し「高い」が7割

以前からネット上などで「お通しは断れる?」という議論がしばしばなされている。議論になっているということは、この習慣になんとなく腑に落ちないものを感じている人が少なくないということだ。

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特に若い世代にとっては気になる問題のようだ。立教大生がゼミのテーマとして調査した「居酒屋における『お通し』を考える」という報告が話題になり、NHKの番組などでも紹介されたことがある。その報告の一部を紹介しよう。

・代表的な居酒屋チェーンの約5割はお通しを断わることができたが、5割は断れなかった
・500人にアンケート調査をしたところ、お通しの値段について66%が「高い」「やや高い」と回答。質については48%が「不満」「やや不満」と回答(ただし回答者は20代が8割)
・法的には、お通しが「席料」ではなく「料理代」と明確であれば、消費者は断れる
・お通しを断ったことがある人は33%
※参照/「居酒屋における『お通し』を考える―消費者の『知らされる権利』の視点から―」(PDF)

調査した大学生の一人は、「お通し分として支払う300円は、学生の目線で言えば昼食一回分と同じ」とコメントしている。学生にとっての300円は、社会人にとってのそれとは重みが違う。お通しの習慣について疑問を抱くのは当然かもしれない。

上記の立教大生の調査を受けて行われたYahoo!の意識調査では、「無料で出してほしい」が37.2%、「無料でもいらない」が32.2%と否定的な意見が多いが、コメントには以下のようなものもあり賛否両論が拮抗している。

「好きなものだけを注文して食べたいから不要」
「嫌いなものもあるから選べればいいと思う」
「払うのが嫌な人は違う店に行けばいい」
「席料だと思えばいい」

客への気遣いとして始まった「お通し」が、次第に売上確保の手段に!?

「お通し」は“お客様をお通し”するというのが語源で、関西方面では「突き出し」ともいう。そもそもお通しは客への気遣いから誕生したものだ。お酒はすぐに提供できるが、つまみは少し待ってもらうことになるし、ゆっくり料理を選ぶためにも最初に出せる一品があったほうがいい……。そんな心遣いからお通しは習慣化していったという。一杯目のお酒が到着すると同時に、何も言わずに小鉢が出てきて、300~500円ほどの料金が加算されているというのが一般的だ。

客単価3,000円の店だったらその10%をお通し代が占めるわけだから、売上への影響、そして利益率アップの効果はそれなりに大きい。それに食材を効率よく使うこともできる。本来持つお通しの役割が、店側にとって都合のいい売上確保の手段になってしまうのも致し方ないのかもしれない。

お通しに賛成という人も多い。たとえば40代以上の場合は、このお通し問題について“気にしたことがなかった”と考えている人も多いようだ。ネット上の肯定派の意見としては、

「お通しがおいしいお店はまた行きたい」
「値段に見合ったものならあっていい」
「居酒屋の自己紹介みたいなもので、けっこう楽しみにしている」

などがある。個人経営の居酒屋などではお通しがコミュニケーションのきっかけになっていることもあり、お通し文化が全否定されているわけではなさそうだ。

お通しの有無より、「わかりやすい表示」が大切

最近では、外国人観光客にとってお通しのシステムが理解しづらいことも問題となっている。また、アレルギーや苦手な食材に配慮する必要もあるだろう。居酒屋に来店するすべての人に黙ってお通しを提供するスタイルは見直す時期がきているといえそうだ。ちなみに大手居酒屋チェーンの中では『和民』などのワタミフードサービス、『魚民』『白木屋』などのモンテローザグループで「お通しカットOK」を明示している。『鳥貴族』はお通しを出していない。

お通しを「いらない」と言う客に対して、飲食店側でできる対応策

客に「お通しはいらない」と言われたら……結論から言うと、店は自店のルールに従って対処することになる。ただし、客側も店側も納得できるシステムにし、トラブルを避けるためには、次の対策が必要だ。

■お通しの料金を明示する
客側のお通しに関する不満の一因は「頼んでいないものが有料で提供される」ことにある。「当店ではお通しの料金として××円を頂戴しております」と看板やメニューにわかりやすく記載するほか、口頭での説明を行おう。

■お通しのお断りOKを明示する
お通しでトラブルに発展するのは、店からの案内がなく、客がお通しを食べた(手をつけた)あとに、「有料だとは知らなった」と主張するケースだ。これを防ぐためにも、お通しの料金の明示に加えて、断れることをメニュー等に記載してもよい。

■食べたくなるお通しにする
お通し肯定派の意見として、「店の味がわかる」というものがある。簡単に出せる一品から、“店の自己紹介”の一品にすることで、お通しを断る客は減るはずだ。また、アレルギーや食べられないものがある人に配慮して、2種類以上のお通しを準備して接客スタッフが席に案内したときに説明するのもよい。種類が多ければ選ぶ楽しみを提供することもできる。

“すごいお通し”が話題になっているお店もある

お通しを売上安定化の手段として捉えている店は少なくないだろう。一方で、 “お通しってこの程度”という先入観を逆手に取る店もある。インパクトがあるお通しは、SNSに投稿されることも多いので、宣伝効果も期待できる。実際の例をいくつか挙げてみよう。

■『オレンチ』(秋葉原)
立体的に盛り付けられた季節の野菜やフルーツをディップソースで味わう。チャージ・お付きだしとして450円。

■『かんだ光壽』(神田)
一汁八菜のお通しが1,280円(税別・チャージ料込)。味、ボリュームともに定評がある。姉妹店の『酒仙 しんばし光寿』(新橋)では、日本酒との相性が抜群な先付、椀、肴がお通しとして提供されている。

■『しろふくろう 東光店』(北海道旭川市)
「もやしナムル」「フライドポテト」がお通しとして、2時間食べ放題。価格は330円。お通しあり・無しを選ぶこともできる。

■『かき小屋 はまお』(茨城県つくば市)
お通しは旬の素材を使った、店の看板メニューのがんがん焼き。牡蠣や海老や白蛤などが人数分入っている。

以上のように、「お通しはやめる」「お通しの料金、断れるかどうかを明記する」「お通しを積極活用する」と店の対応はさまざまだが、いずれにしても料金に見合うものであること、表示をわかりやすくすることの2点を念頭に置いて考える必要がある。

【まとめ】
・「お通し文化」には疑問の声もあるが、全否定はされていない
・お通しはあってもよいが、料金表記はもちろん、断れるかどうかも明記するとよい
・積極活用するなら「驚きがあるお通し」「凄いお通し」で印象を残す方法もあり

お通しに対する考え方は千差万別だ。すべての方を満足させるのはなかなか難しいが、無用なトラブルを避けるためにも上で挙げた対策を講じてみてはいかがだろうか。

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ほんだこはだ

ライター: ほんだこはだ

グルメ、ライフスタイル、旅、恋愛、まちづくりなどの記事を各種サイトに執筆中。大手グルメサイト、ローカルビジネスサイトで多数の飲食店取材を経験。オシャレ食材を家庭料理にして食べるのが趣味。