飲食店ドットコムのサービス

名物は550円のオバアチャンバイキング! 80歳超えが牽引する吉祥寺『トーキングゴリラ&デブー』

LINEで送る
Pocket
follow us in feedly

手塚一郎氏、株式会社ビデオインフォメーションセンター本社にて

画像を見る

開店の正午前から店外には人の列。2024年6月21日にオープンしたばかりの吉祥寺『トーキングゴリラ&デブー』は、550円のランチバイキングを求める若者を中心に連日大入りの状態が続く。メインスタッフは80歳超の女性。「オバアチャンランチバイキング」とのキャッチフレーズもハモニカ横丁界隈で注目の的である。

>>飲食店“専門”の求人サイトだから即戦力が見つかる。社員とアルバイトまとめて19,800円で掲載可!

正午からの2時間に集まる人々

開店と同時にお客が次々と入り、テーブルはもちろん立食の席もほぼ埋まり、入口には空席待ちが並ぶ。取材に訪れた日のカウンターには「豚肉と野菜の炒め」「鶏手羽のからあげ」「鶏肉とやさいの炒めおから」「麻婆豆腐」「三鷹野菜 たたき胡瓜 冷鮮トマト」「きりぼし大根」など本日の大皿が運ばれた。人出の多い平日正午のハモニカ横丁、2時間限定、ワンコインでこれだけバラエティに富んだ料理が楽しめるとあればお客が押し寄せるのもうなずける。

競合する店舗は『吉野家』(牛丼並盛498円)、『松屋』(牛めし430円)などの大手外食店が考えられるが、「多少高くてもおかずの種類が多く、食べ放題なら…」と考える顧客を取り込めているようで、さらに場所は吉祥寺の人気ケーキ店だった『レモンドロップ本店』が入っていたビル。世界的なデザイナーの隈研吾氏デザインの洒落た空間だけに、女性客が入る心理的ハードルは牛丼店より圧倒的に低い。

高齢の女性が作る料理が並ぶ

画像を見る

客単価の低い店にありがちな喧騒に満ちた空気はない。入口付近で待つお客にスタッフがカウンターの中から空いている場所に誘導するなど、お客とスタッフのコミュニケーションが円滑に行われ、店内の雰囲気が明るいのも特徴である。

店舗を運営するのは株式会社ビデオインフォメーションセンター(VIC、本社:東京都武蔵野市)。ビデオ機材の専門店からスタートし、ハモニカ横丁の13の飲食店を中心に30店舗以上を構える。550円のバイキングは、三鷹の『ASIANS アジアの小さな百貨店』で始めたもので、グループ内では2店舗目となる。代表取締役の手塚一郎氏(77)は「今、テコ入れをしていまして、(税別)500円でも原価が割れない、人件費の半分ぐらいは出るぐらいのメニューを作ろうと考えているところです」と話す(以下、コメントは全て同氏)。

開始当初は鶏の唐揚げや豚足といった人気大皿の大半を独り占めしたり、タッパーで料理を持ち帰ろうとしたり、迷惑行為を行うお客もいたという。そのため現在では上記のメニューは1人2つもしくは3つまでに制限している。他の客に料理が行き渡らなくなるのを防ぐための止むを得ない措置。それでいて店内にピリピリしたムードはなく明るい雰囲気であるのは「みんなでマナーを守って、このサービスを維持してもらおう」「このサービスを支えているのは一人ひとりの客」という意識が利用客の間に醸成されているからなのかもしれない。

この充実した内容なら770円、あるいは990円でもビジネスとしては成り立つように思える。そこをあえて550円という価格設定をした理由を聞くと「確かにいろいろな人に話を聞くと『770円でも大丈夫では』と言われますが、始める時に『普通ではダメだな』という感覚がありましたから」とのこと。

その上で「まだ本格的な工夫をしていません。オープンから3か月ぐらいは徹底的にいい材料を安く仕入れて、これならいけるというメニューを作って、できる限り(550円を)崩さないでいいなら崩さないで、と思っています」と、しばらくは550円で収益が出る方途を探る構えを見せている。

Pocket
follow us in feedly
飲食店ドットコム通信のメール購読はこちらから(会員登録/無料)
飲食店ドットコム ジャーナルの新着記事をお知らせします(毎週3回配信)
松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/