飲食店も注目の「103万円の壁」引き上げはいつ? 人手不足の解消につながる一方でデメリットも
石破茂首相は11月29日の所信表明演説で、「103万円の壁」について「2025年度税制改正で議論し引き上げる」と表明した。年収103万円を超えると所得税を支払わなければならなくなるため、103万円を超えないように働く人も多いが、この金額を引き上げて人手不足の解消や国民の収入増を目指そうという考えだ。今回は飲食店経営者が知っておくべき「103万円の壁」の概要とその他の「年収の壁」について解説する。
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「税金」「社会保険」「配偶者手当」に関わる年収の壁
厚生労働省が発表している資料「年収の壁について知ろう」によると、「103万円の壁」とは年収が103万円を超えると所得税を支払わなければならなくなることを示す。会社員のほか、アルバイトやパートなど給与所得を得ている人は、所得税を計算するための課税所得金額を求める際に、基礎控除48万円と給与所得控除55万円が控除される。そのため、収入がこの合計103万円までの人は課税所得金額が0円以下となり、所得税は発生しない。これを1円でも超えてしまうと手取りが減ってしまうため、働き控えが起こるといった問題が以前から議論されていた。
画像を見るなお、年収の壁には103万円以外にも、税金に関わる壁として100万円、150万円、201万円がある。100万円を超えると住民税の支払いが発生する。150万円では配偶者控除が満額で受けられなくなり、201万円で配偶者控除が0円になり、税負担が増えることになる。ほかにも、社会保険料を支払わなければならなくなる年収の壁など、さまざまな年収の壁があるのが現状だ。
このうち103万円の壁については現在、国民民主党が基礎控除を75万円引き上げて年収の壁を178万円にするよう与党と協議している。国民民主党は来年1月から実施するよう求めているが、事務的な手続きが間に合わず、国税・地方税あわせて7〜8兆円の減収にもなると与党は主張しており、まだ合意には至っていない。
画像を見る年収の壁を引き上げた場合のメリット・デメリット
もし103万円の壁が178万円にまで引き上げられた場合、働きたくても手取りが減ってしまうため労働時間を調整していた人が、75万円分の労働時間を増やすことができる。具体的には扶養されている主婦や主夫、学生などが該当する。人手不足となっている飲食店などにとっては、これによって人手を増やすことにつながるだろう。
ただし、飲食店側にとっては、社会保険料の負担が増えることにもつながりかねない。従業員が51人以上の企業では、週の労働時間が20時間以上で月額賃金8.8万円(年収106万円)以上の労働者が社会保険の適用対象となる。社会保険料は企業と労働者で折半するため、飲食店事業者側としては社会保険料の負担が増えるというデメリットもある。
103万円の壁が引き上げられることで、飲食店経営者にとってメリットもあるだろう。しかし、社会保険料の負担増などのデメリットもあるため、経営にどのような影響があるのかを知るためにも、年収の壁について理解しておく必要がある。今後の税制改正についても注目しておきたい。