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後継者不足に悩む「地域密着の個人店」。その火を絶やさないと決意した「二代目の熱き想い」を聞く

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埼玉県川口市にある中華料理店『香翠』

高校時代から父の跡を継ぐことを意識

「両親が切り盛りするこの店に入って、3年目になりました」。そう語るのは、埼玉県川口市にある中華料理店『香翠』の二代目、小林大輔さん。現在38歳の小林さんは、東京都内の名店で修行を重ねてきた人物。新宿高島屋に日本初出店した小籠包の名店『鼎泰豊(ディエンタイフォン)』、青山に本店を構える香港料理『糖朝』の都内各店、さらに恵比寿の小籠包専門店『京鼎樓(ジンディンロウ)』。数々の名店を渡り歩きながら点心をはじめとした中華料理の技を磨き、そして35歳の時に『香翠』へ。

「高校を卒業して料理人の道を選び、その頃から何となく、将来は店を継ぐのかなという気持ちがありました。でも、たとえ自分が継ぎたいと言っても父が『うん』と言ってくれるかどうかは全くわかりませんから、修業時代はかなり必死で頑張りました」

小林さんが修業する店として台湾料理や香港料理を選んだのは、「父とは違う専門分野を持ちたい」という考えがあった。小林さんの父・茂さんは、『中国名菜 銀座アスター』で修業。その後、夫婦で東京都足立区に店を構えて20年、そして川口市に移転して10年目。『香翠』の周辺は新しい戸建も多い閑静な住宅街で、駅からはかなりの距離がある。それでも週末には満席になることも多い、地元の繁盛店だ。小林さんは同じ料理人になって改めて父への尊敬の念を強くしたという。

「小さい頃から慣れ親しんだ父の味というのは、本当に美味しいもので、自分が中華料理を学ぶようになってはじめて、それが当たり前のものではないことに気付きました。父の専門は広東料理で、長年に渡って日本人好みへ少しずつ味を変えながら完成させています。今もメイン料理は父が鍋を振っています」

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『香翠』の二代目・小林大輔さん

小規模店だからこその思わぬ苦労も

そんななか、二代目である小林さんは、自身の得意料理「小籠包」を『香翠』で提供しようと決意するのだが、軌道に乗せるまでは思わぬ苦労があった。

「大きな店には専用の機械があります。でもそんな設備はありませんから、小籠包は生地から完全に手作りしています。手作りする場合、手早くこねないと生地は乾燥してしまうのです。試行錯誤を重ね、納得のいく小籠包ができるまでに2年ほどかかりました」

こうして努力を重ねるうちに「小籠包」は徐々に話題となっていった。『香翠』に、またひとつ看板メニューが増えたとあって、常連客は大歓迎、評判を聞きつけて新たに来店するお客も増えた。小林さんにとっては、父・茂さんにも、そしてお客にも二代目として受け入れられた気持ちだったのかもしれない。

現在も小林さんは研鑽を重ねている。点心のメニュー開発、ほかのお店の食べ歩き、そして2016年3月からはブログでの情報発信も始めた。ブログでは、今までと違った客層の開拓ができたらと考えている。

『香翠』の繁盛の理由は、「郊外店で本格的な中華が食べられる」ということが一番だが、ご夫婦だけで切り盛りしていた頃から、清潔感のある明るい店づくりと、丁寧な接客も店の大きな魅力となっている。小林さんはこの点をこれからさらに意識していきたいという。

「自分でも、入りにくいなと感じる中華料理店って多いですから。まずお店がキレイなことは最低条件で、さらに照明、店構えなども明るい雰囲気を心掛けています」

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小林さんが開発した小籠包は『香翠』の新たな魅力に

これからも「町の中華料理店」として

現在、お店には足立区の頃の常連客が「香翠さんの春巻きが食べたくて」と家族を伴ってはるばる足を運んでくるという。さらに、周辺の新興住宅地に移住してきた若い世代のファミリー客も増えている。お店を大きくすること、2店舗目を出すことも将来的には考えているのかを尋ねてみた。

「できれば、という思いはありますが、まだまだ自分の味を固めることが先決です」

父・茂さんが築いてきた『香翠』の味を受け継ぎ、かつ自分の料理も確立させるという大きな目標。その目標を叶えられたときに、『香翠』の新たなステップが見えてくるのかもしれない。

「最近は家族でのお祝いの宴会に利用していただくことが増えています。家族で訪れたい店、誰かに紹介したくなるお店というのが自分の理想です。まだまだこの店でやるべきことがあるので頑張っていきます」

都心や駅前、ロードサイドにはチェーン店が軒を並べ、昔ながらの「町の中華料理店」の姿は減りつつある。しかし大手飲食店なら決して出店しない郊外の住宅地で、『香翠』は地元密着の店として奮闘していた。中華料理に限らず、個人店のひとつの成功例として大きな参考になるのではないだろうか。

『中華料理 香翠』
住所/埼玉県川口市弥平1-1-10
電話番号/048-225-0168
営業時間/11:00~L.O.13:50、17:00~L.O.20:20
定休日/木曜
席数/22

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ほんだこはだ

ライター: ほんだこはだ

グルメ、ライフスタイル、旅、恋愛、まちづくりなどの記事を各種サイトに執筆中。大手グルメサイト、ローカルビジネスサイトで多数の飲食店取材を経験。オシャレ食材を家庭料理にして食べるのが趣味。