2017年の肉トレンドをフォーリンデブはっしーさんに聞く。キーワードはフォトジェ肉!?
“空前の肉ブーム”と言われて久しいが、2016年は生肉規制の反動からローストビーフ丼や揚げ時間1分のレアな牛カツに注目が集まった。2017年はどんな肉料理が流行るだろうか? 元旦以外の364日、昼と夜はすべて外食(年間800軒以上)、各メディアで「日本一のグルメブロガー」と紹介されているフォーリンデブはっしーさんに、「2017年の肉トレンド」について取材した。
肉×魚介類のマリアージュがブームの兆し
フォーリンデブはっしーさんといえば、『東京 肉らしいほどうまい店』という本をKADOKAWAから出版し、日本最大級のフードイベント「肉フェス」の応援団長にも就任した人物。そんな無類の肉好きの彼が語る肉のトレンドとは?
「今はSNSで話題になればお客さんが来る時代になりました。SNSの勢いはすごいですし、メディアも動向をチェックしています。ただ、なんでもかんでも情報が拡散されるわけではなくて、そのお店や料理を取り上げたくなるような『要素』が絶対に重要だと思うんです。つい写真を撮りたくなるビジュアルや、誰かに話したくなる変わった素材といった、ネタにしやすい要素が組み合わさることでSNSでは広がっていくものです。
肉もSNS映えするようなビジュアルや、盛り付けも含めて昨今のトレンドがあると思います。肉だけに『フォトジェ肉』と呼んでいるんですけど(笑)。花が咲いているように肉を盛り付けたり、ドライアイスをたいて演出したりすると、『うわっ、なにこれ』って思いますし、SNS映えするんですよね。
フォトジェ肉の始まりは盛り付けだったのですが、最近、『肉と珍しい食材の組み合わせ』という食し方が新しい要素として入ってきています。たとえば、肉とウニを組み合わせた『うにく』。レア目に仕上げた赤身の肉に、ウニが濃厚なソースとなって絡んで相性抜群なんです。肉といくらを合わせたものも出てきています。僕は『にくら』って呼んでいますけど(笑)。そういった食材との組み合わせによって、面白さが生まれるだけでなく、『理にかなった美味しさへの進化』というものがあると思うんです」
肉と魚介類を組み合わせた料理は、なぜ増えているのだろうか?
「ラーメン業界では一般的なんですが、魚介系と動物系をあわせることによってうまみの奥行きを広げることができるんです。いわゆるマリアージュによる、美味しさの相乗効果ですね。今は、肉自体が差別化しにくい時代になっています。たとえ希少部位のミスジやA5ランクの肉であっても、扱っているところが多いのでそれだけでは訴求力が弱くなっているんです。そこに高級食材を組み合わせることによって、肉の付加価値を上げているのです。
ウニやイクラ以外でも、まだまだ旨みたっぷりの食材ってたくさんありますよね。カキもそうですし、フグもいいと思います。これから『フグ出汁のしゃぶしゃぶ』なんてのも出てくるかもしれないですね」
高級食材や、魚介系の旨みを加えてくれる食材と肉の組み合わせは、これからますます広がっていきそうだ。
2017年はジビエのハンバーグが人気になる?
はっしーさんの予想によると、今年は「ひき肉」を使った料理が要注目だという。
「実は昨今、国内で牛を繁殖する農家が減りつつあるんです。すでに仔牛の種類によっては3倍くらいまで値段が跳ね上がっています。中長期的には、和牛を扱える高級店と、外国産の肉を扱う大衆向けの店の二極化が進むはずです。その移行期である今年は、これまでの価格帯をキープした肉料理を提供するため、手頃な価格のすね肉や切り落とし肉、ひき肉を使った料理が多くなると思います。
もうひとつの方向性として、話題性を狙って牛肉以外の肉を使うという選択肢もあります。いわゆるジビエにも注目が集まると思います。ジビエはSNSで取り上げられやすい食材でもありますし、さきほどのひき肉とジビエがくっついて、「猪ハンバーグ」や「熊肉ハンバーグ」が出てきてもユニークですよね。ガチョウやカンガルー、カラス、ハクビシンといった珍しい食材を使った肉料理を提供する店も増えるかもしれません。
それと、昨今の動向を見ていると、昔から親しんできた王道の料理が進化して戻ってくるという流れがあるんです。たとえば、B級グルメの王様のやきそばが無添加や自家製麺にこだわった本格的な料理になったり、餃子がワインに合うおしゃれなつまみとして進化したりしました。『身近にあるものがこんなふうに変わったんだよ』というギャップの面白さはメディアが取り上げやすいんです。その流れにも沿っているので、今年はハンバーグなどのひき肉料理が進化して戻ってくるんじゃないかと思っています」
牛肉の値段が上がっているからこそ、違う選択肢にも目を向けることで、新しい可能性が見えてくるかもしれない。