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中目黒『阿弥頭』、“映え”メニュー戦略で月商700万円。20代女子に愛される店づくりとは!?

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人気トップを争う「マスカットサワー」(858円)。ライバルは「苺サワー」「練乳いちごミルク」という(写真提供:大合)

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アルコールをそれほど飲まない若者向けの「愛されドリンク」

ふんだんに生の果実を用いるドリンクは、美しく盛り付けるにも時間がかかるため、専任のスタッフを一人置いているほど。20代の女性から絶大な人気を集めており、ロスが発生しやすいナマモノだが、仕込んだ分すべて出切るのも強みだ。

テーブルでゲスト自身が茶を点て、碗から注ぎ入れて完成させる「抹茶ミルク」(770円)(写真提供:大合

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「若いゲストはあまりお酒の量を飲まないですから、1杯分の価格を上げても頼まれるメニューを開発しました。フルーツ系の『可愛いメニュー』のほか、抹茶やシェイカーに入れたカクテルなど、ゲスト自身がテーブルで完成させるドリンクも人気です。動画の需要にも応える、こうした『動きのあるメニュー』は確実に流行ると踏みました」

「杏仁ミルク」(770円)は“まさに飲む杏仁豆腐”という味わい。名古屋で経営する店舗でもバズったドリンク(写真提供:大合)

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階段を上がってすぐのメインフロアはすべてカウンター席(40席)。色とりどりのドリンクを照らし出すのはアートギャラリーなどで使われるトップライトだ(写真提供:大合)

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1年未満で開業資金を回収

『Nakame Sakaba 阿弥頭』を運営する株式会社大合の創業は1970年。宇都宮や高崎の百貨店やスーパーに惣菜を卸し、堅実なビジネスを続けて半世紀を経た2021年、名古屋中心部で複数の飲食店を経営する株式会社武(たける)により事業承継のため買収されたという。

「惣菜事業の利益率は2〜3%なので、飲食に比べると潤沢にキャッシュを生み出せる事業ではありません。買収によって組織の規模も大きくなったので、新たなことをやろうと考えたのです。手堅い経営をしているために与信力も十分ありました」

メインフロアの奥にあるのは44席のサブフロア。全席テーブル、2人組のゲストの場合は対面でなく隣同士で通される(写真提供:大合)

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物件が決まったのは2023年2月末。そこから開店まで、坂本さんと大合副代表の向後さんは、東京で評判の店をひたすら回って飲食トレンドを掘った。導き出された内装のコンセプトが「とにかく写真映えする空間」というものだった。

「この元カフェの物件は人気エリアの掘り出しものですが、天井高が低く圧迫感がありました。そこで床材を剥がし、天井を抜いて上下に空間を広げるとともに、横方向の視線をミラーで広げています。躯体むき出しの仕上げは流行のデザインですが、内装費を浮かせられるというメリットもありましたね」

見事に写真が“盛れる”空間に仕上がっているが、開業資金は約2,700万円と想定よりもリーズナブル。大合と母体の武が手掛ける飲食店では、全店舗で利益が年間15%以上出るように経営戦略を立てているという。

アルバイトスタッフと「肉汁焼売」を手早く仕込む向後さん。80席以上の注文をさばくにはキッチンスペースが手狭で基本は2人、週末に3人が入ると一杯になる。ホールは平日2〜3人、週末は3〜4人程度で回す

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「立地、賃料、坪数から逆算して、そこに自ら持っている強みをはめ込むのがセオリーです。この店の場合は低コストでランニングを抑え、常に満席にするのが出店戦略でした。東京進出の1号店なので、早めに資金回収して次の店舗のオープンに繋げる使命を持たせたのです」

その狙い通り、開店当初から集客は順調。オープンから1年を待たずして開業資金の回収に成功する。現在、平日の来店者数は席数と同程度で週末は1回転半しており、月商は平均700万円ほど。客単価は2,700円〜3,000円でFL率は55%である。

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神吉弘邦

ライター: 神吉弘邦

経済誌『Forbes JAPAN』、デザイン誌『AXIS』、建築誌『商店建築』、カルチャー誌『BRUTUS』などに寄稿するフリーランス編集者。コロナ禍で飲食店のありがたさに気づき、料理の奥深さにも開眼。メディア取材や企業コンサルティングのかたわら、現在「あて巻き」発祥の寿司居酒屋でも修行中。実家は仕出し屋。