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客単価8,500円でリピート率8割! 『都立大学 ぶらんこ』に学ぶ、地元から愛されるコミュ術

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『都立大学 ぶらんこ』の店主・植竹貴俊氏

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店名『ぶらんこ』の由来は公園の遊具から。都立大学という“公園”で、大人がいつでも“遊べる”居酒屋を目指している。店主・植竹貴俊氏(38歳)はホテルの和食店やふぐ料理店などで修業を積んだ職人肌。味噌まで手作りするほど丁寧な仕事ぶりで、酒肴の味も抜群と評判だ。一方で、複数人で来店すると注文したメニューを一人分ずつ小皿に取り分けて提供してくれたり、一人客にはハーフサイズ&半額料金で対応してくれるなどの、気の利いたサービスも支持される理由だろう。

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「日常に彩りを」をコンセプトに、客単価は8,500円とミドルアッパー向け。それでもリピート率と地元客利用率は共に8割に達し、連日満席状態に。2018年の創業以来コツコツと地盤を築き、6年間で月商も3倍超に膨らんだ『ぶらんこ』植竹氏に、地元住民から愛される店づくりについて聞いた。

名物の「肉厚椎茸しゅうまい」(1,320円)。本来ソフトボールほど(2人前)の大きさだが、カットして1人分に取り分けて配膳(写真提供:都立大学 ぶらんこ)

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オープンキッチンは調理のライブステージ

都立大学は急行電車が止まらないこともあるが、両隣の学芸大学、自由が丘に比べると落ち着いた雰囲気。住環境に優れ、住民は「上質な方が多い」と植竹氏は言う。『ぶらんこ』の利用客の年齢層も基本、30歳以上のハイミドルクラス。彼らを満足させるには、美食でもてなすだけではいけない。

「お店の在り方を丸い円で捉えるように意識しています。円を構成するのはおいしい『料理』はもちろん、居心地よい『空間』『接客』や『提供スピード』『価格』など。そのいろんな要素を数値化し、掛け算することでお客さんの満足度を上げ、バランスの良い円をつくれるわけです。なので、どれか1個でも0なら、いくら掛けても合計0。料理10・接客0だったら円になりません。これは『ぽつらぽつら』(渋谷・神泉)の米山(有)さんに教えてもらいました」

『ぽつらぽつら』とは、植竹氏が独立前に3年半勤めていたオープンキッチンの人気創作和食店。その代表が米山氏だ。同店からはハード面でも影響を受けた。

L字カウンター席。オープンキッチンのため、客の死角となる場所にゴミ箱や清掃道具を置く気配りも(写真提供:都立大学 ぶらんこ)

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「店内の造りは『ぽつらぽつら』と割と一緒ですね。1フロア(13坪)にL字カウンターの席とテーブル席を置く、このスタイルでやりたかった」

肝となるのが、契約したスケルトン物件に構えた9席のオープンキッチン。カウンターをL字にしたのは、角の席を使えば2~4名でも会話がしやすいから。カウンター自体は寿司店のようなフラットな設計に。これなら座っても、バッチリ手元まで調理シーンが見られる。

「ライブ感があって楽しいと思います。『調理を見ているだけでも酒のつまみになる』と言う常連さんもいますね。そういった反応をその場でいただけるのも、クローズキッチンや段差のあるカウンターにはない楽しいところ」と、その魅力を語る植竹氏。さらにこう補足する。

フードは約50種。3分の2のメニューは毎日の食材の仕入れ内容によって考案する

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「うちにはライブ感を味わってもらうメニューがいくつかあります。その一つ、『イワシの海苔巻き』(1,650円)はオーダーを受けた後に、生のイワシをお客さんの目の前でおろすんですけど、うろこを取るところから始めます。提供スピードも大切なので、ある程度準備しておくメニューもありますが、“魅せる仕事”があってもいいのかなと」

カウンターの“観客”は職人の魚さばきに見とれて、思わず追加注文を入れることも多いそう。『ぶらんこ』のオープンキッチンはエンタメ性が高く、店側はそれを上手く活用している。

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小林智明

ライター: 小林智明

埼玉県出身。情報誌の編集プロダクションを経て、2006年にライターとして独立。食、旅、スポーツ、エンタメなど多岐にわたり取材・執筆活動を展開中。グルメ取材はラーメン店を中心に計500軒を突破。好きなお酒は辛口純米酒。